凄腕トレーダーと将棋AIと中田翔。

日経平均が3万円を突破した時にはイケイケモードが漂っていたが、さすがに息切れか。米株式は史上最高値更新を続けているが、日経平均は頭打ちして27000~28000円を行ったり来たり。先行き不透明な状況で利益を出すのも一苦労である。

Twitterで有名トレーダーを何人もフォローさせてもらっているのだが、いつも感心するのは、その柔軟性。この先株価は上がるから買い!と言ってる矢先に逆へ動いたとき、凄腕の皆さん方は総じてスパッとポジションを切り、損を出す。そして逆に売りのポジションを取っていたりもする。この変わり身の早さはなかなか真似できない。多くの人は一度立てた方針をなかなか曲げることができない。固執するあまり、損を大きく抱え込むことになる。その時一生懸命考えて導き出した最善と思われる方針に対して、感情を一切排除しすぐさま「NO!」を突き付けることのなんと難しいことか。その時その時の最善を尽くす。その域に達した者だけが成功者になれるというわけだ。

私の数少ない趣味の一つである将棋では、将棋AIの実力がはるかに人間を上回っている。プロはAIを駆使して研究を進め、AIによる新手が次々に生み出されている。まさに新時代到来である。将棋AIは、1秒間に数億手を読む、人間には到底真似できない読みの早さもさることながら、学ぶべき点は、局面を「点で読む」ところにあると思っている。人間は、自分が指した手を活かすことを前提に将棋を組み立てる。いわゆる「流れ」を大切に「線で読む」。前に指した手の「顔を立てる」なんて言い方もする。一方でAIは、その局面での最善手を突き詰める。一手前に何を指したかなんて全く関係ない。右辺を攻めていたと思ったら、突然左辺を守ったりするのだ。手の脈略がないのである。だから人間にはその手の意味が一目理解しづらい。将棋AIもまた、凄腕トレーダーと相通じるものがある。手の流れを無視して、その局面での最善を尽くす。こんな私でも、この境地にたどり着ければ、少し将棋が今より強くなるかもしれない。

さて、今日、北海道日本ハム中田翔選手がチーム内で他の選手に暴行し出場停止処分となった。一般企業でこのようなことがあったら、クビ案件だ。企業じゃなくても、例えば高校だって、こんなことをクラスメイトにしたら退学処分もあり得る。つくづく野球界は甘いなと思う。これまでの中田選手のチームへの貢献を考えたら、即刻クビにするなんて厳しすぎる、ということなのかもしれない。果たしてこれが最善策なのだろうか。過去の活躍がどうだったか、チームの顔だから、などという要素を一切排除し、感情抜きにもっと厳しい処分を下すことが、最下位に沈むチームを変える意味で必要なのではないか。栗山監督の長期政権の是非と共に、日ハムは真剣に考えたほうが良いと思う。

成功の鍵は、これまでどうだったか、ではなく、今何をすべきか、だ。